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対談特集 アヒルと鴨のコインロッカー

特集 アヒルと鴨のコインロッカー対談 伊坂幸太郎×武田こうじ

武田 こうじ(たけだ こうじ)

武田 こうじ (たけだ こうじ)

詩人。1971年生まれ。仙台を中心に、自費出版詩集の刊行、ポエトリーリーディングライブを展開するほか、詩のワークショップの講師、ラジオのパーソナリティ、雑誌の連載などを勤める。昨年7冊目の詩集『小さな死の集まり』を刊行。近年は、東京、山形、金沢など、仙台以外でもポエトリーリーディングライブを展開している

武田  実際『アヒルと鴨のコインロッカー』『陽気なギャングが地球を回す』『チルドレン』と、3本映像化されて、正直なところ気分的にどうなんですか?
伊坂  うーん。純粋に、観たいことは観たいんですよ。こんな俳優でやります、とか聞くと、どんな風になってるのか楽しみで。ただ、やっぱり僕の本のほうが面白くあってほしい。本当は作って僕だけ観て終わり、っていうのが理想だけど(笑)、そうはいかないし。僕の本を読んでいる人たちで原作との違いを 気にしちゃう人とかもいるだろうから、そうなると複雑なんですよね。
武田  よく伊坂さんと映画の話するときにさ、作家の部分と監督の部分と、どう映像化されたのかって話するじゃないですか。その話してたのが自分に回ってきて、どんな感じかなぁって?

伊坂幸太郎(いさか こうたろう)

伊坂幸太郎 (いさか こうたろう)

1971年千葉県生まれ。東北大学法学部卒業。2000年『オーデュボンの祈り』で第5回新潮ミステリー倶楽部賞を受賞し作家デビューする。2003年『重力ピエロ』が直木賞候補となる。2004年『アヒルと鴨のコインロッカー』で第25回吉川英治文学新人賞を受賞。短編『死神の精度』(「オール讀物」2003年12月号)で第57回日本推理作家協会賞を受賞。他の著作に『ラッシュライフ』、『陽気なギャングが地球を回す』があり、好評を博している。大学時代より仙台在住。

伊坂  第三者だと、”なんであの作家、映画化OKするんだよ”って思ってたけど、当事者になってみると分かる気がするんですよ(笑)。やっぱり、いろんな人との熱意とかを感じると断りづらいところもあるし、最終的には別物って割り切り方 もあるし。ただ、最近では別物って割り切るのもずるい気がして、それで終わっていくと誰も幸せにならないし、OKするんであればなるべく口を出したいし。”よりよくしなきゃいけない”って気持ちが強くなってきて。
武田  今回は『アヒルと鴨のコインロッカー』が映画化された訳だけど、意外ですよね。『重力ピエロ』あたりが先に目をつけられるのかなぁ、って思ってたから。
伊坂  そうですか。もうこれはプロデューサーの熱意が一番でした。その人が発売直後に「やりたい」って言ってくれて。トリック的なところもあるんで「どうするんですか?」って聞いたら、「そこは何とかします」って言うので。だから、思う存分、好きにしてください、と。で、監督から「このやり方でやります」って言ってくれて。
武田  作家としては、どこまで口出しするもんなんですか?

伊坂  それはもう、ケース・バイ・ケースです。「あなたが納得するまでスタートしないですよ」と言ってくれるところもあれば、なかなか脚本見せてくれなかったり、意見を聞いてはくれるけれど取り込まれない、とか(笑)。ただ、『アヒルと鴨』に関しては脚本の段階から何も言わないで「もうこれで!」って感じでしたね。

武田 この作品に関しては幸福な感じなんですね。

伊坂  そうですね。
武田  もしかしたら納得いっていない部分もあるんじゃないか、って意地悪に思ったりもしたんだけど。
伊坂  いや、でも本を書いている人は、みんな自分のほうが面白いと思っていると思うし、僕もそう思ってる。“11に負けない” みたいな。でも、そういうの抜きにしても面白いなって思う。
武田  僕はすごい数の映画を観てきているけど、原作を越えるのなんて数えるほどしかなくて。だから、どうなのかなぁって思ったけど、いい意味で料理されているって言うか。でも、結構「同じだよ」って言う人が多かったけど、全然違いますよね。

伊坂幸太郎

伊坂  そうですよね。
武田  伊坂さんの作品ってリズム良く読んじゃうんだけど、どの作品にも共通してるのは、会話にこだわって書いてるところだと思うんですよ。でも映画は間合いを取っているじゃないですか。最初に『アヒルと鴨のコインロッカー』を読んだときに迫ってくるものがあって、世界観的に結構怖いものがあったんだけど、映画では結構ほのぼのとしていいリズムなんですよね。 “なるほどな、映画化ってこういうことなんだな”って思いました。
伊坂  僕、この監督の“間”がすごい好きで。僕の小説って、比較的映像にできそうって思ってくれているみたいなんですけど、自分では意外にうまくいかない印象があるんですよね。でも、この監督は“間”で表現してくれるっていうか。殺伐とした話なのに、濱田 岳くんの役がすべてを優しくしている感じがして。

武田こうじ

武田  実際に映画化されて、その舞台が仙台だった、っていうのはどうでしたか?
伊坂  意外に僕の知ってる場所が出てないんです。まったく知らない人が観ればどこで撮っても同じなのかな、とも思いますけど、基本的に僕の住んでいる街が映画の舞台になるということ自体はドキドキしますよね。
武田  これは息の長い映画になるんじゃないかな。原作もそうだけど、明確なメッセージを発信するというよりも“何かをまた確かめたいな…”と思わせる作品だから。仙台が舞台ではあるけどご当地映画ってわけでもないし。伊坂さんがいい作品を書いて、それに監督が惚れて、彼らが登場してくれて…っていうのがたまたま仙台だっただけで。
伊坂  仙台で撮ってるから、こういう映画になった、という風にどこかでつながってくれればな、って思う。あと関係ないですが、僕が見た瑛太さんの作品の中では、この映画の中の彼が一番恰好いいです。
武田  確かに。
伊坂  瑛太さんは自分に厳しいのか、納得できていない部分もあるって小耳に挟んだんですけど、でも、この映画の中の彼はとても素晴らしいです。
武田  まぁ、僕らはあんまり浮かれすぎないでね、映画はあくまで中村監督の作品ってことで、僕ららしく応援しましょう。
伊坂  武田さんのお店で100本くらいレンタルで(笑)
武田  じゃあ、店長に言っておきます(笑)